公開 : 2020/10/4 , 写真追加 : 2023/1/22
神戸の副都心・HAT神戸に隣接し、近代的ビルが建ち並ぶ一角に時代にポツンと取り残された建物を見つけました。阪神電鉄春日野道変電所です。
この建物の見所は、四隅や外側にせり出した柱の上部にある、変電所という厳つい施設には不釣り合いな可愛らしい飾り。設計者の遊び心を感じます。
この建物、いつ建てられたのかといった情報が不明です。建物の雰囲気から昭和初期の建物のように思われます。
公開されている阪神電鉄の公式資料を見ると、阪神電鉄の変電所は沿線に7か所あり、そのうちの一つが、この春日野道変電所だそう。でも竣工年は未記載でした。
竣工年を探るため「神戸大学付属図書館デジタルアーカイブ」の古地図も見てきました(といってもネット上で見られるんですけどね)。
1934年発行の「実地踏測神戸市街地図」を見ると、この発電所のある場所に「葺合郵便局」がありました。ということは、1934年当時、この変電所は存在していないことがわかります。
そして、この地図、阪神電車の線路は書かれているにも関わらず、春日野道駅がありません。地図上の線路をたどると終点の三宮駅らしき駅は記載されています。
もしかすると、この変電所の生い立ちには最寄り駅の阪神春日野道駅の開業も関わってるのかも…と、調べてみると1905年開業…明治時代やん!
ところが…です。「実地踏測神戸市街地図」が発行された1934年、阪神電鉄には大きな転機があったのです。
1933年、岩屋駅から三宮までの地下路線化が進められ、その間、春日野道駅は一時的に廃止されていたのです。つまり、そのタイミングで発行された「実地踏測神戸市街地図」に春日野道駅が掲載されていないのは当然だったわけです。
阪神三宮駅(当時は神戸駅)が地下駅として開業したのは1933年。その翌年、阪神春日野道駅が地下駅として開業します。
それまでの阪神電車は路面電車と同じ扱いでしたが、地下路線に切り替わったことにより輸送力は増強されたとのことです。
ここからは推測ですが、輸送力増強に伴い、沿線に自社の電気設備が必要となり、葺合郵便局の場所に変電所を建てた…とも考えられます。
であれば、葺合郵便局が現在地に移転した年から推測できそうですが、葺合郵便局が現在地に建設されたのは1968年とのこと。この変電所の趣から、1968年は新しすぎるような気もします。
変電所の看板。黒ずんで看板の意味をなしていませんが、それなりに時代を感じます。よく見ると楷書体で「阪神電気鉄道株式会社 春日野道変電所」の文字が読み取れます。
[2023年1月22日追記]
2023年のある日、たまたま国土地理院の1947年頃の空中写真を見ていたら(どういう状況なんやw)、既にあるやん! 空襲から約2年、周りに建物がほとんどないので、余計に目立ちます。
写真中心の目玉みたいな区画は脇浜乙女塚古墳と思われます。今は石碑だけが残ってます。