とも姐の神戸散歩

阪急上筒井線跡

公開 : 2021/6/20 , 写真追加 : 2022/1/10

阪急上筒井線跡

線路の向こうに見えるのは王子公園駅。その駅の手前で線路が分かれています。

阪急電車が神戸に乗り入れたのは1920年。当時の神戸側の終着駅は「神戸駅」でした。ところが、その神戸駅は三宮駅ではなく、王子公園駅から1kmほど西側にあったと言われています。

阪急上筒井線跡

1枚目の写真の分岐している線路の先は、このように途切れています。阪急上筒井線跡です。

1920年の開業当時、ここから「阪急神戸駅」へ延びる路線がありました。そもそも、現在の三宮へ向かう線路はなかったのです。

1936年、阪急が三宮へ乗り入れると、阪急神戸駅は「上筒井駅」に改名、三宮にできた新駅が「神戸駅」を名乗りました。もともとの本線は上筒井線という支線となりますが、乗客の減少で上筒井線は1940年に廃線となり、現在に至ります。

ちなみに大阪梅田駅から阪急神戸駅(上筒井駅)までは35分で結ばれていたそうです。

国土地理院地図の1930年代後半版と2020年版を比較し、現在の地図上に阪急上筒井線のルートをプロットしました。この地図に基づいて、阪急神戸駅(上筒井駅)を目指します。

阪急上筒井線跡

寸断された高架から、その先を振り返ってみました。昔、その向こうへも線路は延びていたのです。

しかし、はっきり言って散歩する時間帯を誤りました。思いっきり逆光です😓

阪急上筒井線跡

歩道をまっすぐ行くと王子公園駅の駅舎に突き当たるため、横断歩道を渡って王子動物園側の歩道に来ました。

車道と歩道が不自然に離れています。手前の歩道は王子動物園へ行く歩道。1930年頃の国土地理院の地図を見ると上筒井線は車道側を通っていたようです。

原田拱渠 原田拱橋

1936年竣工の原田拱渠こうきょ (阿部美樹志設計・土木学会選奨土木遺産)。上筒井線が阪急神戸線だった頃は存在しなかった高架です。上筒井線は王子公園駅の山側を経て、この写真の撮影地点へ延びていました。ちなみに当時は王子公園駅も存在せず、阪急が三宮に乗り入れた1936年に「西灘駅」として開業しました。

原田拱渠 原田拱橋

原田拱渠の下から西方向を眺めてみました。当時、写真のようにまっすぐ延びる4車線の道路車道はなく、この辺りは関西学院大学の敷地になっていました。上筒井線は関西学院大学の敷地の縁に沿うように通り、この写真でいうと右から正面のビルを貫くような形で、緩やかなカーブを描いて西を目指しました。

ここで一旦、上筒井線の痕跡は消えてしまいます。

王子銃砲火薬店

西進する線路は王子銃砲火薬店(2020年閉店)付近を通り、さらに西へ進みます。

王子神社

王子神社。
今は神社になっていますが、当時はこの辺りも関西学院大学の敷地内でした。上筒井線は王子神社の海側(写真左)を通ります。

王子神社

王子神社内の「元原田神社」の碑
王子神社の起源は鎌倉時代に創建された原田神社。神社は今の王子動物園、王子陸上競技場の辺りにあったそうで、戦後、神社敷地に動物園、陸上競技場が計画されたことにより、現在地に移転してきました。

横尾忠則現代美術館

王子神社の裏から上筒井線が通っていたと思われる道が現れます。そして、ずばり上筒井線の跡ではないかと思われそうな高架のような構築物が現れます。

ここは兵庫県立美術館王子分館(1970年竣工・村野藤吾設計)の裏です。この高架のような構築物は上筒井線の跡ではありませんが、設計者はもしかするとここに上筒井線が通っていたことを知っていて、このようなデザインにしたのかも…と思ってしまいます。

上筒井線跡

兵庫県立美術館王子分館と横尾忠則現代美術館の裏を通り抜けると、ここからは中央区(当時は葺合区)に入ります。現在はテニスコートがありますが、上筒井線はこのテニスコートを貫き、そのあと北西方向へ。そして、その先に上筒井駅がありました。

上筒井駅

いよいよ阪急神戸駅(上筒井駅)があった場所にやってきました。地図上では左の建物(兵庫県福祉センター)と右の公園の間にありました。

上筒井駅

ここがホームのあった場所になります。しかし、駅があったことを示す物は何もありません。

上筒井駅が神戸駅だったころ、ここは市電上筒井駅に乗り換えができるちょっとしたターミナルになっていたようです。阪急電車の乗客は、ここからは布引、滝道(現在の三宮センター街東口バス停付近)へ向かいました。

しかし、1936年、阪急電車が三宮へ乗り入れると上筒井駅の利用者は激減、その4年後の1940年、上筒井線は廃線となりました。廃線後、神戸市は西宮へ移転した関西学院大学の敷地を東西に貫く道路を計画、市電を石屋川まで延伸させ、新たな交通網を構築し、現在に至ります。

上筒井駅

駅や線路の痕跡を探すため、この周辺をぐるっと回ってみました。すると公園の裏側で道が不自然な折れ方をしているところを見つけました。もしかすると向こうの道は上筒井線の線路跡に沿って作られたのかも?

王子公園駅

ところで王子公園駅のホームから上筒井線跡を見ようと思ったのですが、すでに特等席に先客がいて、撮影することはできませんでした。

王子公園駅

そんなこともあろうかと、電車の窓からも撮影しておきました。

王子公園駅

1936年、阪急電車が三宮へ延伸した頃、電車の窓からはこのような景色が見られたのでしょうね。

阪急上筒井線跡

上筒井線跡を横目に、阪急神戸線を走る阪急電車(「コウペンちゃん号」のラッピング電車)。

そういえば、2017年頃から阪急電車が神戸市営地下鉄に乗り入れる計画が検討されました。そのルート案の一つに王子公園駅から新神戸駅へ乗り入れる案があり、実現すると上筒井線復活なんて話もあったとか、なかったとか。結局は、その乗り入れ計画そのものが白紙化されました。

→あわせて読みたい:幻の阪急上筒井駅ターミナル計画

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