北野坂から北野天満神社へ向かう細い坂道を上がっていくと、左に北野天満神社、そして風見鶏の館(重要文化財・1909年竣工)が見えてきます。ほとんどのエトランゼはこの坂道を左へ曲がりますが、曲がったことが嫌いな私は、ここを直進します。
勾配のきつい坂道を登ること5分足らず。“草原”の向こうに格子窓が特徴的な旧トーセン邸(1919年竣工)が見えてきました。
がれきの向こうに、そびえ立つ旧トーセン邸
廃墟とは言え、今でも堂々とした姿を見せています。菱形の窓枠は旧ハンター住宅(重要文化財・王子動物園内に移築)にも見られます。
実はこの地にワンルームマンションが建つ計画があったようです。
建築計画標識によると2021年1月着工、8月完成とありますが、今年は2022年。工事前からワンルームマンション計画も頓挫してるやないですか!
手入れしてないとここまで荒れてしまうものでしょうか。
旧トーセン邸はもともと公開異人館でしたが、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに公開が取りやめられ、廃墟化が進みました。
裏に回ってみました。
人の気配はありませんが、雨戸が中途半端に開いてるし…。昼間だからいいものの、夕暮れや夜だと、絶対に通りたくないですね。
…といいつつ、後日、夜にも訪れています。
どの異人館にもいえることですが、裏は地味な構造です。特に旧トーセン邸の裏は山のため、海側のような装飾は不要でしょう。
建物の脇から海側を臨みます。北野町の異人館なのに、誰もいない…。
工事フェンスの外から中を覗き込んでみました。
1階のベランダ部分。荒れているように見えますが、少しだけ手を加えればすぐにでも公開できそうな雰囲気です。
玄関の扉。シンプルですがレトロティック。ドアノブや押しボタンが比較的新しいことを考えると、今でも管理をしている人がいるようです。
玄関上部と2階。1995年以降、文字通り扉を閉ざしてしまったトーセン邸。なんと2010年に「ひょうごの近代住宅100選」に選ばれているのです。兵庫県お墨付きの文化財でもあるのです。それだけに、このままにしておくのはもったいないです。
ガラスの外された扉から、スマホの望遠機能で覗き込んでみました。突き当たりの壁には、時代が感じられる家具が残されているのがわかります。
2階のバルコニーの外壁はヨーロッパの家具にありそうな可愛らしい造りです。ぜひともいつかは綺麗になって、公開されることを願っています。