神戸市役所の北側にある「こうべ花時計」。待ち合わせや、デートコースなどでブラッと立ち寄った人も多いのではないでしょうか。
日本最初の花時計として知られる「こうべ花時計」は、神戸市役所2号館の立て替え計画により、2018年11月に撤去されることが決まりました。
上の写真は、こうべ花時計最後(505番目)のデザインとなる「茜離宮」です。
「茜離宮」とは、神戸市立須磨離宮公園固有のバラの品種。毎年5月頃に見頃を迎えます。残念ながら花時計には茜離宮の花は使われていません。
1957年4月、当時の宮崎辰雄神戸市長のアイデアにより、日本最初の花時計の計画が持ち上がり、地元企業や市民から寄付金も寄せられて神戸市役所北側の広場に建設されました。
2002年、地下鉄海岸線が開通すると、最寄り駅が「三宮・花時計前」駅と名付けられ、市民にも広く親しまれた存在となりました。
2018年2月、花時計の南側に建つ神戸市役所2号館の建て替え計画が決まりますが、花時計は、その立て替え予定地となり、撤去されることが決まりました。
普通なら、日本最初の花時計という文化的価値の高い施設だけに移転も検討されるべきですが、この時点で花時計の移転先を決めていなかったのです。
東遊園地南側の噴水広場への「仮移設」が決まったのは、花時計撤去の直前のこと。ただし、正式な花時計の移転先は撤去の時点で決定されていません。これは花時計の名前を付けた駅がある地下鉄海岸線を無責任に「失敗」と言い放った久元喜造神戸市長による採算重視・文化軽視の市政運営の象徴的出来事といえます。
さて、61年間で505回も植え替えられた花時計のデザインの中で定番となるデザインも存在します。
まず、年初の干支デザイン。まさに市民への年賀状ともいえ、毎年、葉ボタンにより制作されます。2017年の酉年は、神戸の象徴でもある「風見鶏」がデザインされました。
そして、毎年5月には「神戸まつり」のシンボルマークが描かれます。
2018年11月、日本最初の花時計が設置された地での最後の花時計。
実は、花時計がある広場には開設時の碑があります。もしかすると、花時計撤去とともに二度と見ることはできないかもしれないので、全文、原文のまま転載します。
花時計について
神戸市が我が国はじめての花時計建設を計画されたのを喜び、私ども神戸フラワァソサィティは、街を美しくして、市民の生活にうるおいをもらたすようにと広く市民に呼びかけて資金を募り、神戸緑化協会及び毎日新聞社の協力を得て、新市庁舎落成のこの日にこれを作りあげました。
この市民のちからで出来上った花時計が、どうかいつまでも、みなさんの眼を楽しませ、心を明るくひらく時を刻むように祈って居ります。
昭和三十二年四月 神戸フラワァソサィティ会長 原口梅子
2018年11月29日、日本最初の花時計は、久元喜造神戸市長らによって、針が止められました。
止められた時間は9時29分。この時間、長針と短針を入れ替えると「5時46〜47分」に見えます。神戸の人にとっては忘れることができない阪神・淡路大震災が発生した時間とほぼ同じなのです。不思議な因果を感じます。
※公式サイト:花時計(神戸市)