2022年5月、商船三井ビルディングの竣工100周年を記念して、普段は関係者以外立入禁止のエントランスが一般公開されました。
まずは玄関上部。注目したいのは扉の上の大理石の枠の下。じっくり見ないと気付かないほどの細かな模様が施されています。
一歩中に踏み込むとエントランスの照明に感動します。照明だけを見ると面白味を感じませんが、天井に映し出される幾何学模様が芸術的。
その照明を真下から。影を愉しむ照明を初めて見ました。私の勤務先にも付けて欲しいです。
現役のオフィスビルでは日本最古(築100年!!)といわれるだけあって、今も多くのオフィスが入居しています。
ところでこの壁。何の変哲もない壁ですが、実は日本で初めて内装で使われた石膏の壁なのです。
建築家の渡辺節は、このビルを設計するにあたり渡米し、アメリカの建築技術を習得しました。そして外装のテラコッタ(素焼きの装飾)など、日本初の技法をこのビルの各所に取り入れました。
玄関を入って左側には郵便ポストと手動式エレベーターがあります。手動式エレベーターは現在も貨物用として使われているそうです。
そして郵便ポストには「メールシューター」がつながっています。メールシューターとは上層階から、この郵便ポストに手紙を投函できる仕掛けです。
郵便ポストも年季が入っています。メールシューターにエントランスの照明が反射しています。
実はこの写真を撮った直後に、上層階からの手紙がメールシューターで投函される瞬間に出くわしました。その瞬間を写真に撮れなかったのは残念です。
手動式エレベーターの文字盤。
ちなみに神戸にはもう1か所、西元町の松尾ビル(1925年竣工)で同時代の手動式エレベーターが活躍中です。
玄関正面には3機のエレベーターがあります。古そうですが現代のエレベーターです。
エレベーターの扉の間にある装飾。大正時代に流行っていたのでしょうか。ほかにも梁の出っ張りにも装飾が施されています。
廊下。床がタイル張りです。
突き当たりに何かありますね。さらに奥へ行ってみましょう。
廊下の突き当たりには竣工当時=100年前に使われていたポストが設置されていました。さすが大手商社。社内のポストも舶来品ですね。
大正時代のポスト前から振り返ってみました。タイル張りの床にメンテナンスの跡を見つけました。震災の痕跡でしょうか。
女子トイレの扉。トイレの扉にも風格を感じます。中もレトロチックなのだそう。
築100周年記念のリーフレットをいただきました。設計者の渡辺節や商船三井ビルディングの見所などが写真入りで解説されています。このページの解説の参考にさせて頂きました。